折衷主義のカウンセリング理論


精神分析理論(3)

<精神分析における性格論>

「無意識の意識化」とは、これまで気づかなかった自分の反応(行動)の仕方やくせに気づき、その反応やくせの意図を知り、なぜそのような感情を持つに至ったかの由来を発見することである。つまり、自分の性格を知ること。

精神分析的見地では、性格に対して4つの観点がある。バッサリと無謀に短くまとめてみる。

1. 性格はどうつくられるか
       【リビドー(生のエネルギー)の発達過程】


2.
 性格はどう発現されているか
       【力動的見地(防衛機制・適応機制)】


3.
 性格はどう構成されているか【性格構造論】

4.
 性格の偏りやくせは何に起因するか【コンプレックス論】


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1. 【リビドー(生のエネルギー)の発達過程】

生(性)のエネルギーが、人生の各発達段階でどう満たされてきたかによって、性格がきまるというとらえ方。

口唇期・・・
誕生から離乳までの時期に問題があるケースを口唇期性格。甘ったれ、酒好き傾向。

肛門期
・・・
あらゆるしつけの原点である、トイレのしつけの時期に問題があるケースを肛門期性格。几帳面、ケチ、愛情・時間・金銭を出し渋る傾向。

男根期・・・
ペニス=力の象徴。男児は誇示。女児は男根羨望
男児(女児)が母親(父親)に定着=エディプス・コンプレックス

潜在期・・・
学齢期=社会のルールの学習。本能的欲求(エス・イド)の抑圧・抑制(潜在化)

性器期・・・
親に対する依存や気兼ねがなく、異性と感情交流ができる状態を生殖器的性格。口唇期、肛門期、男根期、潜在期の各発達段階をそれぞれうまく乗り越えて到達する状態。

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2.【力動的見地(防衛機制・適応機制)】


個人が自分を取り巻く環境に対し、どのように反応するか。その反応の仕方を性格とみなすとらえ方。精神分析では反応の仕方を「防衛機制(自己防御)」という。問題のある性格を、「防御の必要のないときに不必要な防御をする人」とする。

防衛機制の種類は多い。(抑圧・抑制・昇華・合理化・感情転移・置き換え・知性化・退行・逃避・同一化・摂取・投影・反動形成・補償)。そのなかで主だったものをいくつかを簡単に説明してみる。


抑圧(repression)・・・

外界からの否定・侮蔑・嘲笑・拒否を恐れて、無意識裡に欲求の充足や過去の苦痛体験を我慢(抑圧)する。例:いい子ちゃん

合理化(rationalization)・・・
認めたくない自己の欠点や満たされない欲求に対して、それを正当化(理論化)して自他を納得させること。例:イソップ寓話「すっぱい葡萄」

感情転移・・・
ある特定の人に向けるべき感情を、類似の他者に向ける。例:母に甘えられなかった息子が年上の女性に甘える

置き換え(displacement)・・・
受け入れがたい感情や欲求を別の対象に置き換える。例:坊主憎けりゃ袈裟まで憎い

知性化(intellectualization)・・・
感情をあらわに表出できないので、抽象化・観念化によって表現する。例:「彼とは価値観が異なる」(あいつは反吐が出るほど嫌い)

逃避(escape)・・・
現状の苦しさを回避するため、他のものに心的エネルギーをついやす。例:家庭が面白くないのでボランティア活動に打ち込む

投影(projection)・・・
自己の受け入れがたい感情や欠点を正視できず、自己以外のものに責任転嫁する。例:性的欲望を抱いている相手に対し、自分が誘惑されていると感じる

反動形成(reaction formation)・・・
自己の弱さや欠点を認めたくないので、それを克服するために他の極端に走る。例:劣等感の強い人ほど攻撃的になる

補償(Compensation)・・・
劣等コンプレッスクを克服する建設的な防衛機制。直接補償(例:劣等生が発奮して勉強し、博士号を取る)と間接的補償(例:性格俳優になって容姿コンプレックスを乗り越える)
(つづく)